天と地と

あらすじ
『天と地と』(てんとちと)は、1990年公開の角川春樹監督の日本映画。戦国時代末期、有力な戦国大名たちが領土支配を争う時代を舞台にした、壮大かつ野心的な時代劇である。 物語は、上杉謙信(演:榎木孝明)と武田信玄(演:津川雅彦)という二人の宿敵を中心に展開する。両者は互いを打ち倒そうと容赦なく戦い続け、その軍勢は数々の壮絶な戦いを繰り広げる。 若くして慈悲深い謙信は、冷酷かつ狡猾な信玄との対立を深めていく。謙信は熟練した武将でありながらも、戦争の過酷な現実を知り尽くした信玄の残忍さと獰猛さに苦しむ。終わりの見えない戦いの中で、謙信は勝利のためには自らの道徳と信念を犠牲にしなければならないという厳しい現実に直面する。 本作は、中世日本の姿を圧倒的な映像美で描き出している。広大な風景と、綿密に構成された戦闘シーンは圧巻。坂本龍一と久石譲が作曲した音楽は、壮大なスケール感とドラマを演出し、映像を完璧に引き立てている。 『天と地と』の重要なテーマの一つは、戦争がもたらす人的犠牲の探求である。謙信と彼の軍勢は信玄との戦いに巻き込まれ、戦闘の残酷な現実と、それに伴う悲惨な結末に直面する。本作は、戦火に巻き込まれた罪のない一般市民や、兵士たちが被る苦痛を描いている。 出演者の演技も素晴らしく、榎木孝明は謙信を繊細かつ内省的に演じている。謙信に深い傷つきやすさと人間味を与え、観客が共感できる人物として造形している。津川雅彦も信玄役として、冷酷さと狡猾さを巧みに表現し、強烈な印象を与えている。 監督の角川春樹は、本作で監督デビューを果たし、時代に対する深い理解とテーマを見事に表現している。角川監督は、戦国時代を長年研究し、歴史的な文献を詳細に調べ、物語の正確性と信憑性を確保したと語っている。 壮大なスケールと野心的な映像表現にもかかわらず、『天と地と』は、戦争がもたらす人的犠牲を深く憂慮した作品である。紛争の本質と暴力の結果について、示唆に富んだ問いを投げかけ、観客に登場人物の行動の道徳的意味合いを熟考させる。 映画のタイトルである『天と地と』は、戦国時代の「天国と地獄」という概念を指しており、戦国大名や武士たちが支配権をめぐって絶え間なく争う様子を表している。また、謙信自身の内なる葛藤のメタファーとしても機能しており、彼は自身の道徳律と戦争の厳しい現実との間で苦悩する。 最終的に、『天と地と』は、戦争が人命に与える悲惨な打撃と、紛争の道徳的意味合いを考慮することの重要性を深く印象づける作品となるだろう。
レビュー
おすすめ
