マタンゴ

マタンゴ

あらすじ

本多猪四郎監督による1963年のSFホラー映画『マタンゴ』は、イングマール・ベルイマンのミューズともいえる監督が、人間の本質にあるサバイバル、貪欲、そして暗黒を描いた、身の毛もよだつ、示唆に富んだ物語である。福島正実の小説「埋れたる洞穴」を原作とした『マタンゴ』は、孤立の結末と権力のための容赦ない闘争を描いた、手に汗握る物語を見事に作り上げている。 映画は、ケサン(藤田進)、タロ(藤田浩)、タカダ(稲垣浩)、マミ(水野久美)、ユミ(八代美紀)という5人の友人たちが、ケサンのヨット、ケッセイ号で豪華な船旅に出るところから始まる。彼らに同行するのは、2人の乗組員、ゴウ(草川直也)とタケシ(夏木陽介)である。航海は思わぬ方向に進み、突然の嵐に見舞われた船は座礁し、赤道近くの熱帯の島に不時着してしまう。 当初、一行は食用となるものがほとんどない、不毛で過酷な島に漂着する。損傷したヨットをシェルターとして、友人たちは限られた資源に頼り、以前の乗組員が残したわずかな食料を配給せざるを得なくなる。食料配給を巡って争いが起こり、彼らの根深い不安やささいな争いが露呈し、緊張が高まっていく。 日が経つにつれ、友人たちの絶望感は増し、食料と権力を追い求める中で、ますます無謀になっていく。島の菌類環境は、すでに緊迫した状況に不気味な雰囲気を加え、一行は何か深刻な異常が起こっているのではないかと疑い始める。彼らが知らないうちに、島のユニークな生態系には、菌類の成長を糧とする謎の存在が潜んでいるのだ。 転機は、ユミが珍しいキノコの隠し場所を見つけ、ためらうことなくそれをむさぼり食うときである。驚いたことに、彼女は奇妙で落ち着かない身体の変化を示す、菌と彼女の体の間の何らかの共生関係を示唆する。ユミの行動がますます不可解になるにつれ、一行の疑念は募り、彼女が菌の宿主になったのか、それとも菌自体が彼女を操っているのではないかと疑い始める。 一行の力関係は急速に悪化し、妄想、疑念、そして露骨な憎悪の渦に巻き込まれていく。元船長のケサンは、支配権を維持し、残された最後の食料を確保するためには手段を選ばない冷酷なリーダーとして台頭する。緊張が高まるにつれ、友人たちの混沌への転落は加速し、最終的には一連の残忍で破壊的な対立となり、彼らの心の中にある暗黒を露呈させる。 『マタンゴ』は、本多監督によって人間の本性の最も暗い側面を探求するために見事に作られた、心理ホラーの傑作である。本多監督は、登場人物たちを人里離れた島に隔離することで、閉所恐怖症と絶望感を煽り、物語を前進させ、友人たちを限界まで追い詰める。彼らの苦闘を通して、この映画は人間の条件、生存の本質、そして権力の堕落した影響について、深い問いを投げかける。 『マタンゴ』の忘れがたい映像と不気味な雰囲気もまた特筆に値し、島を覆う菌類の成長は、潜む暗黒の象徴となっている。撮影は印象的で、損傷したヨットの閉所恐怖症的な親密さと、島の不気味で非現実的な風景を捉えている。本多監督は、これらの対照的な要素を織り交ぜることで、示唆に富み、不安をかき立てる映画を作り上げ、観客に忘れがたい印象を残す。

マタンゴ screenshot 1
マタンゴ screenshot 2
マタンゴ screenshot 3

レビュー