北北西に進路を取れ

『北北西に進路を取れ』は、1959年のアメリカのスパイ映画で、監督はアルフレッド・ヒッチコック、脚本はアーネスト・リーマン。主人公のロジャー・ソーンヒルを演じるのはケーリー・グラント。彼は有能な広告代理店の幹部だが、複雑なスパイ活動の網に巻き込まれてしまう。 物語は、暖かい夏の日にTWA302便で、ロジャー・ソーンヒルが友人のイヴ・ケンドールの出発を待っているところから始まる。しかし、ヴィランであるフィリップ・ヴァンダム率いる男たちが、ロジャーを政府エージェントのジョージ・カプランと勘違いしたことから、事態は予期せぬ方向に進む。カプランに関する情報を引き出そうと、男たちはロジャーを誘拐し、監禁し、尋問を繰り返す。 ロジャーはどうにか悪党どもの手から逃れるが、その体験は彼をひどく動揺させ、混乱させる。彼はすぐに、自分が「オペラ」と呼ばれる高度に機密性の高い貴重な共産主義者のスパイ組織を調査するために作られた架空の政府エージェント、ジョージ・カプランと間違えられたことに気づく。カプランを親しい知り合いだと信じたロジャーは、成り行きに任せてその役を演じることにする。 事態を解明するため、ロジャーはニューヨークの国連本部へカプランの連絡係であるレナードに会いに向かう。しかし、レナードはフィリップ・ヴァンダムの手下によって殺されてしまい、ロジャーはさらに事件に深く関わることになる。命の危険を感じたロジャーは逃走を余儀なくされ、街中を高速カーチェイスや間一髪の脱出で、悪党の手下から逃れる。 事態が深刻化する中、ロジャーは美しく魅力的な女性、イヴ・ケンドールと出会い、彼女は状況を解決するために協力すると申し出る。二人は誤解を解き、ロジャーの名誉を回復するための計画を練る。その過程で、二人はお互いに惹かれあい、スリリングなプロットにロマンチックな要素が加わる。 ロジャーはその後、中西部の絵のように美しい風景や、ラシュモア山の険しい地形を旅するが、その間も悪党たちの執拗な追跡から逃れ続ける。その過程で、彼は複雑な出来事に巻き込まれ、スリリングな結末を迎える。物語が進むにつれて、ロジャーは機知と機転を利かせて悪党の一歩先を行き、欺瞞と人違いが複雑に絡み合った網の中をくぐり抜ける。 『北北西に進路を取れ』は、バーナード・ハーマンによる象徴的な音楽、息を呑むような長回し、アメリカの風景の素晴らしい眺めなど、ヒッチコックの特徴的な技法を駆使している。主人公たちが列車事故を間一髪で回避する映画のクリフハンガーな結末は、緊張感とサスペンスに満ちた場面を作り出すヒッチコックの手腕を示す典型的な例である。 映画のクライマックスは、ロジャーがシカゴにある象徴的なベルナルディーニ・ホテルにチェックインする記憶に残る場面で、イヴは悪役のフィリップ・ヴァンダムと恋仲を装って二重スパイとして働いていることが明かされる。この展開に至るまで、ヒッチコックはイヴ・ケンドールの真の忠誠心に対する疑惑を絶妙に作り上げ、真実が明らかになる瞬間まで観客をハラハラさせ続けることに成功している。 最終的に、ロジャーは間一髪で死を逃れ、映画の最後のショットでは、彼とイヴはラシュモア山のモニュメントで再会し、抱き合い、息を呑むような景色を見つめる。複雑なプロットのねじれと見事な映像を通して、『北北西に進路を取れ』はサスペンスとスリルの完璧な手本を示し、ヒッチコックの最高の映画の一つとしての地位を確立している。