パッション
あらすじ
メル・ギブソン監督が、イエス・キリストの磔刑を強烈な献身と畏敬の念をもって描いた作品。映画は、イエスがゲッセマネの園で逮捕されてから、磔刑、そして死に至るまでの最後の12時間に焦点を当てています。 物語は、イエス(ジム・カヴィーゼル)とその弟子たちが最後の晩餐を共にし、聖餐を制定するところから始まります。しかし、この静穏な瞬間は、イエスがユダ・イスカリオテ(ルカ・リオブ)によって銀30枚で裏切られたことで打ち砕かれます。 ポンテオ・ピラト(リスト・ショポフ)の右腕であるクラウディア・ポルケス(フランチェスコ・デ・ヴィータ)が率いるローマ兵士たちが、イエスを逮捕するために到着します。続くシーンは、兵士たちがイエスに激しい暴行を加え、打ちのめし、血まみれにするという、残忍で容赦のない暴力の場面です。 イエスがピラトの前に引き出されると、ローマ総督から嘲笑と軽蔑を受けます。イエスが無罪を訴えるにもかかわらず、ピラトは「私はこの男に何の罪も見いだせない」と宣言し、死刑を宣告します。そして映画は、ローマ兵士によるイエスの鞭打ちの場面に移ります。これは当時の残虐さを鮮明に示す、目を覆いたくなるような描写です。 「パッション」のクライマックスは、イエスがカルバリーの丘へ向かい、2人の盗賊と共に磔にされる場面です。ギブソン監督の演出は、歴史的細部に至るまで注意を払い、アラム語のセリフを使用し、聖書の記述に忠実に従っている点で注目に値します。 ジム・カヴィーゼルは映画全体を通して、静かな尊厳と強さをもってイエスを演じ、その苦しみをより痛切なものにしています。マグダラのマリア役のマイア・モルゲンステルンをはじめとする助演陣も、確かな演技を披露しています。 「パッション」は、技術的な完成度と感情的な共鳴に観客を畏敬の念を抱かせる、挑戦的で妥協のない映画です。そのグラフィックな内容から、誰にでも受け入れられるとは限りませんが、人類史上最も重要な出来事のひとつを探求する、紛れもなくパワフルで示唆に富む作品です。