妖猫伝 (ようねこでん)

壮麗さと美しさで知られる晩唐の都、長安。その街に、住民を不安にさせる出来事が起こる。それは軍事的な衝突や自然災害ではなく、強力な一族である唐家の邸宅に侵入した、まるで超自然的な存在である妖猫の仕業だった。妖猫の出現は、権力のバランスを崩し、都全体に衝撃を与える。 この異常事態に対処するため、皇帝は詩人で元官吏の杜預年（と・よねん）、別名、杜清恵（と・せいけい）を呼び出す。杜は文才に長け、優れた詩人である一方、オカルトにも通じており、世界の影に潜む神秘的な力にも精通している。彼は妖猫の力の源を調査し、それを除去する方法を見つけ出す任務を負う。 邸宅に到着した杜は、調査を支援するために呼ばれた僧侶、慧立（えりつ）と出会う。敬虔な仏教徒である慧立は、世界とその仕組みについて独自の視点を持っている。2人は意見の相違はあるものの協力関係を築き、共に妖猫の謎を解き明かそうとする。 手がかりを求めて辿り着いたのは、霊的な力が強く、過去の秘密を守る僧侶たちが住む白龍寺。そこで、彼らは高僧である静禅師（せいぜんじ）から、白龍寺の物語と妖猫の重要性について話を聞く。静禅師によれば、妖猫は悪意のある生き物ではなく、変化の先触れであり、古い秩序が新しい秩序に取って代わられる兆しだという。 杜と慧立が謎を深く掘り下げていくと、唐家が暗い秘密を隠していることを知る。一族の長である唐の玄宗は、権力を利用して、霊を鎮めるための人身御供を含む、数々の残虐な行為を行っていた。妖猫は、一族の罪悪感の表れであり、神々が反撃しようとしている警告のサインであるようだ。 彼らの捜査は、妖猫の魂を持っていると噂される李氷潔（り・ひょうけつ）という若い女性の存在にも繋がる。李氷潔は唐家の一員であるが、強い意志と決意を持つ女性でもある。彼女は仏教の修行のために寺に送られたが、家族からは自分の「状態」が知られることを恐れて、世間から隠されている。 杜と慧立が真実を追求していくうちに、陰謀と欺瞞の網に巻き込まれていく。彼らは、目標を達成するためには手段を選ばない、腐敗した官僚や権力欲にまみれた貴族たちが関与する、朝廷の最高レベルにまで及ぶ陰謀を暴く。 捜査を通じて、杜と慧立は、妖猫が単なる生き物ではなく、時代の変化の象徴であることに気づく。唐王朝は崩壊の危機に瀕しており、古い秩序は新しい秩序に取って代わられようとしている。妖猫は、神々が介入し、平和と調和の新時代をもたらそうとしているサインなのだ。 最終的に、杜と慧立は妖猫の正体と唐家の秘密を明らかにし、李氷潔の強さと勇気を見出す。李氷潔は、家族の腐敗から解放された人生を送ることを決意する。 騒動が収まると、都・長安は妖猫の教訓をじっくりと考える。人々は古い秩序が崩壊しつつあること、そして平和と理解の新時代が到来することを悟る。妖猫の伝説は、変革の力と、自然界との調和の重要性を思い起こさせる、街の民話の一部となる。 最終的に、杜と慧立の捜査は妖猫の謎を解くだけでなく、唐王朝の中心にある腐敗と衰退を明らかにする。彼らの物語は、知識の力と、圧倒的な困難に直面しても不正に立ち向かうことの重要性の証となるのだ。