デッド・ドント・ダイ

ジム・ジャームッシュ監督の奇抜でユーモラスな世界で、のどかな町センターヴィルは、死者、というよりアンデッドがよみがえり占拠し、大混乱に陥る。『デッド・ドント・ダイ』(2019年)は、ゾンビというアイデアそのものを茶化しながらも、ゾッとするほど面白い展開を見せる、ゾンビ映画のパロディだ。 センターヴィルは、アメリカの田舎にある小さくのどかな町で、何も起こらない場所。クリフ・ロバートソン署長（ビル・マーレイ）率いる地元の警察署には、堅物の警官３人、ロナルド・ピーターソン巡査（スティーブ・ブシェミ）、ノーマン巡査（ダニー・グローバー）、ワーナー巡査（ティグ・ノタロ）が勤務している。彼らは地域社会に根ざしており、地元住民によく知られ、好かれている存在だ。 しかし、元ベトナム戦争の退役軍人である町最初のゾンビが死から蘇り、町を恐怖に陥れるという、事態が急変する。警察官たちは、この奇妙な事態に対処するという不名誉な任務に直面し、やや風変わりなスコットランド人の検視官助手、ハーミット・ラディッツ巡査（こちらもビル・マーレイが演じる）が加わる。彼は署長のドッペルゲンガーであることが判明する。 町のゾンビ問題がエスカレートするにつれて、警察官たちは、チェーンスモーカーで不機嫌なフランク・ミラー（ビル・マーレイ）、サングラスとサングラスケースをそのままにゾンビ化した自分自身など、アンデッドの大群と対峙することになる。さらに、破壊的な欲求を持つ、知性のない、よろめく死体と化したピーターソン巡査のゾンビバージョンであるゾンブ・ロン（スティーブ・ブシェミ）や、地元のコンビニエンスストアの店員であるデルロイ・リンドーもゾンビ化して登場し、混乱に拍車をかける。 生き残るために戦う中で、警察官たちは、ゾンビはただの知性のないモンスターではないことに気づく。彼らは驚くほど機知に富み、回復力があるのだ。アンデッドの大発生に対する最初の防衛線となる警官たちは、制御不能に陥りつつあるパンデミックに直面する。 この映画のトーンは、才能あるアンサンブルキャストのおかげで、ドタバタコメディと本物の感動が入り混じっている。その中には、ジム・ジャームッシュ監督の2014年の映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』で演じたゼルダ・ウィンストン役を再演するティルダ・スウィントンもいる。彼女は、町のヒッピーであり、この大惨事にも全く動じない芸術家だ。 『デッド・ドント・ダイ』全体を通じて、ジャームッシュ監督の痛烈なストーリーテリングと、意地の悪いユーモアのセンスが際立っており、これは愉快で型破りな映画体験となっている。ゾンビの黙示録という、不条理でユーモラスな描写には見どころがたくさんあるが、その突飛な表面の下には、私たちの安全と保障に対する脅威への対応の仕方についての言及がある。 『デッド・ドント・ダイ』は、単なるゾンビ映画のパロディではなく、人間の条件を風刺的に探求している。ジャームッシュ監督の冷静なユーモアは、私たちが脅威や権威者にどのように対応するように条件付けられているかに対する巧妙な批判を隠している。それは予想を覆し、ダークなユーモアとウィットを組み合わせ、楽しくて考えさせられる映画体験を生み出している。 ゾンビ映画ファン必見のコメディ！